熱中症対策のハンディーファンに注意
帰宅ラッシュで混雑する駅のホームで、女性ふたりの会話が飛び込んできた。女性の手には、今年の売れ筋商品、持ち歩きタイプのミニ扇風機(ハンディーファン)が握られていた。
猛暑となったこの夏。女性誌は、ミニ扇風機を付録につけて売り上げ増を狙い、街中では、首にかけるハンズフリー型のミニ扇風機もよく見かけた。
だがこの便利そうなアイテム、注意が必要そうだ。
「暑い屋外で、扇風機だけを使っていると、逆に熱中症を招く危険もあります」
そう警告するのは、江東病院(東京都江東区)の三浦邦久副院長だ。ミニ扇風機がはやりだした昨夏から、「扇風機で風をあてていたのに、倒れた」と口にする患者が出始めたという。
なぜなのか。
「汗は蒸発するときに、体から熱を奪い、体温を下げる役目をします。だが、高い外気温のなかで扇風機だけを使うと、熱を奪う前に汗だけが乾き、体温は上がったままになる。脱水症状を引き起こし、重症化すれば命の危険もあります」(三浦副院長)
ミニ扇風機を首あたりに向けるおなじみの光景も、暑さによっては、実は危ない行為だという。
三浦副院長はこう指摘する。
「35度を超える気温のなかで、扇風機の風を首にあてるのは、ドライヤーの熱風をあてるようなものです。首には頸動脈(けいどうみゃく)という太い血管がある。熱い血液が首から脳、体中にめぐってしまうわけです」
ミニ扇風機のショッピングサイトでは、ベビーカーにミニ扇風機を取りつけた写真が掲載されているが、これも避けたい行為だ。
日光を遮ろうと、ベビーカーに日よけをかぶせて扇風機を使用するのは、マフラーを巻いて温風をあてているのと同じことだという。
冒頭の女性は、扇風機の風を、「涼しい」と話していたが、その日は35度を超える猛暑。それは「涼しいと錯覚しているだけ」(同)。
では、ミニ扇風機を屋外で使うには、どうしたらいいのか。
水を霧状に噴射するスプレーボトルやぬれタオルを一緒に使うことが重要だという。ぬらした肌から水分が熱を奪って蒸発してくれるからだ。液体を噴射するタイプの化粧水の空き瓶に、水を入れて持ち歩くのもおススメだ。
熱中症を防ぐためには、気温や湿度、地面の照り返しを考慮した「暑さ指数」を知ることも大事だという。
「計測できる熱中症指数モニターは数千円で購入できます。ぜひ、持ち歩く習慣をつけてください」(